誤差伝搬則の精度アップを試みます。
理由は、為替換算のシグマ(積の合成リスク)を検討している際に、シグマが同等で相関係数rが-1に近いなどの特定の条件で精度が落ちるケースがあることを確認したからです。なので誤差伝搬の次数を上げてみたいと思います。
以前の「
誤差伝搬法則」では全微分を使いましたが、今回は二変数のテイラー展開を用います。
f=f(x,y)という関数があるとし、二次のテイラー展開は、
f(x+dx,y+dy)=f(x,y)+(∂f(x,y)/∂x)dx+(∂f(x,y)/∂y)dy+(1/2)(∂^2f(x,y)/∂x^2)dx^2+(∂^2f(x,y)/∂x∂y)dxdy+(1/2)(∂^2f(x,y)/∂y^2)dy^2+o(dx^2+dy^2) (oはランダウの記号)
ここで資産運用における和の合成リスク(f=x+y)、積の合成リスク(f=xy)に適用する場合は同一変数の二階偏微分はゼロになるため計算から省きます。またランダウの記号以下、微小なオーダーも落とします。
f(x+dx,y+dy)=f(x,y)+(∂f(x,y)/∂x)dx+(∂f(x,y)/∂y)dy+(∂^2f(x,y)/∂x∂y)dxdy
変分は
df=f(x+dx,y+dy)-f(x,y)=(∂f(x,y)/∂x)dx+(∂f(x,y)/∂y)dy+(∂^2f(x,y)/∂x∂y)dxdy
両辺自乗して
df^2=(∂f(x,y)/∂x)^2dx^2+(∂f(x,y)/∂y)^2dy^2+(∂^2f(x,y)/∂x∂y)^2(dxdy)^2+2(∂f(x,y)/∂x)(∂f(x,y)/∂y)dxdy+2(∂f(x,y)/∂x)(∂^2f(x,y)/∂x∂y)dx(dxdy)+2(∂f(x,y)/∂y)(∂^2f(x,y)/∂x∂y)dy(dxdy)
クロス項は共分散であり独立事象であれば消えますが、相関があるとして相関係数rを用いてdxdy=σxy=rσxσyと置き換えます。またdx(dxdy)、dy(dxdy)の項は新たな相関が発生して煩雑になるのを避けるため省略します(入れてみても精度は上がらないようです)。
【誤差伝搬法則 MarkII】
σf^2=(∂f(x,y)/∂x)^2σx^2+(∂f(x,y)/∂y)^2σy^2+2(∂f(x,y)/∂x)(∂f(x,y)/∂y)rσxσy+(∂^2f(x,y)/∂x∂y)^2(rσxσy)^2
これは、従来の形式
【誤差伝搬法則】
σf^2=(∂f(x,y)/∂x)^2σx^2+(∂f(x,y)/∂y)^2σy^2+2(∂f(x,y)/∂x)(∂f(x,y)/∂y)rσxσy
に対して、
(∂^2f(x,y)/∂x∂y)^2(rσxσy)^2
の項(シグマの4次、分散の自乗のオーダー)が追加される形になっています。
【具体例】
ここで普通の分散投資のような加算型(加算平均型)の場合は、a,bをウェイトとして
f=ax+by (a+b=1)
なので、
σf^2=a^2σx^2+b^2σy^2+2abrσxσy
となります(xとyの二階の偏微分がゼロであるため従来と同じ)。
【和の合成リスク(a=b=1/2)】
次に円換算のような乗算型の場合は、
f=axby=xy (a=b=1)
なので、
σf^2=y^2σx^2+x^2σy^2+2xyrσxσy+(rσxσy)^2
となります(従来に対して自乗が加算されるのでシグマは必ず増える方向)。
【積の合成リスク MarkII】
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1. 無題
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