合成リスクの式(誤差伝搬式)はウェイトを変数とすると基本的にウェイトの二次関数(の平方根)で表されます。
二次関数はグラフを描く際に標準形に書き換えると理解しやすいです。
標準形とは高校数学の最初に出てきた一般形とか標準形とかのアレです。
一般形:f(x)=ax^2+bx+c (a≠0)
標準形:f(x)=a(x+b/(2a))^2-(b^2-4ac)/(4a) (a≠0)
これから二次関数はx=-b/(2a)を軸として、頂点がx=-b/(2a)、y=-(b^2-4ac)/(4a)の放物線で表されます。
余談ですが、(b^2-4ac)が複素数解を持つかどうかのいわゆる判別式です。そんなのもありましたね。
これを合成リスクで考えます。簡単のため2資産とします。
σf^2=W1^2σ1^2+W2^2σ2^2+2W1W2rσ1σ2
W2=1-W1と置いて整理すると
σf^2=(σ1^2+σ2^2-2rσ1σ2)W1^2-2(σ2^2-rσ1σ2)W1+σ2^2 ・・・①
標準形に変形して、
σf^2=(σ1^2+σ2^2-2rσ1σ2)(W1-(σ2^2-rσ1σ2)/(σ1^2+σ2^2-2rσ1σ2))^2
+σ1^2σ2^2(1-r)(1+r)/(σ1^2+σ2^2-2rσ1σ2) ・・・②
ここで、σ1=10%、σ2=5%としてσf^2をプロットすると以下のようになります。
②式から、
W1=(σ2^2-rσ1σ2)/(σ1^2+σ2^2-2rσ1σ2) ・・・③
のとき、
σf^2=σ1^2σ2^2(1-r)(1+r)/(σ1^2+σ2^2-2rσ1σ2) ・・・④
という極小値を取ることがわかります。W1は「
分散の効率」で微分から求めたものと一致します。グラフの極小値のラインは各rにおける③、④式のトレースです。
さらに②式の平方根をプロットします。
最小値を取るW1は変わりません。
ここからいくつか場合分けをします。
(i)(σ1^2+σ2^2-2rσ1σ2)=0のとき(二次の係数がゼロのとき)
r=(σ1^2+σ2^2)/(2σ1σ2)
σ1=σ2のときr=1(それ以外はr>1より除外。∵相加平均≧相乗平均)
つまりσ1=σ2かつr=1の場合のみ式が定義できなくなり、①式より
σf=σ2 (=σ1)
となります。
(ii)r=1のとき
②式より、
σf^2=((σ1-σ2)(W1+σ2/(σ1-σ2)))^2
=(W1σ1+(1-W1)σ2)^2
ここで0≦W1≦1よりW1σ1+(1-W1)σ2≧0なので、
σf=W1σ1+(1-W1)σ2
これはσの単純な加重平均です。
(※r=1のときのσfは直線ですがσf^2は少し曲がっています。)
(iii)r=-1のとき
②式より、
σf^2=((σ1+σ2)(W1-σ2/(σ1+σ2)))^2 ・・・⑤
=(W1σ1-(1-W1)σ2)^2
ここでW1≧σ2/(σ1+σ2)のとき、
σf=W1σ1-(1-W1)σ2
同様にW1<σ2/(σ1+σ2)のとき、
σf=-(W1σ1-(1-W1)σ2)
結局、
σf=|W1σ1-(1-W1)σ2|
つまり傾き(σ1+σ2)、切片-σ2の一次関数をW1=σ2/(σ1+σ2)で折り返していることがわかります(正反射)。
余談ですが、⑤式より放物線の焦点は
Fx=σ2/(σ1+σ2)、Fy=1/(4(σ1+σ2)^2)
(iv)極小値が存在するrの範囲
③式より、
W1=(σ2^2-rσ1σ2)/(σ1^2+σ2^2-2rσ1σ2)≧0と置いて、
(-1≦)r≦σ2/σ1 (σ1>σ2)
σに差がある資産だと極小値を持つために必要な相関が小さくなるようです。
ある資産間の相関係数がこのσの比に対して大きいか小さいかで組み合わせや配分を変える判断に使えそうです。
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