改めて「コストだけで判断することは難しい」と感じました。
三井住友アセットマネジメントの日本債、グロ債、全世界株、新興株の確定拠出年金(DC)用インデックスファンドがニッセイ225のように一般向けに降りてくるようです。
このラインアップを見て「新興株があるのになぜMSCIコクサイやMSCIワールドではなく新興国込みのオールカントリー?」という違和感を感じなくもなく、どちらかというと「三井住友・DC外国株式インデックスファンドS」をリリースしてもらいたかったと思っている人は私だけではないはず。たぶんそれ以外の純資産を増やしたいという狙いがあるのでしょう。
ちなみに全世界株連動のACWI(オールカントリーワールドインデックス)は日本込みの「イコールウェイト」が出れば個人的にこれ一本でいいやと思っている指数です(参考:
インデックスをひとつ選ぶとしたら)。
この4資産+グロ株Sを、すでにACWI追従のファンドが存在するeMAXISシリーズの基準価額に対して差分を抽出してみます。データはMorningstarより2011/04/18から2015/09/25まで。分配金はどちらも出ていません。※新興株のみ右軸で3倍スケールになっていますのでご注意願います。
【累積騰落率差(単位時間あたり変化率の単純積分)】
【規格化基準価額比(ゼロ点に対する変化率の相対比)】
【解釈】
この度初めてプロットした「規格化基準価額比」なるものはとある原点からの比の比です。例えばAは10000円が21000円、Bは5000円が10000円になっていたら(21000/10000)/(10000/5000)=2.1/2.0=1.05で5%の差がついたことになります。
まず日本債、グロ債、グロ株は経費率の差の傾きが美しい。まさに「コサイン・シータ」です。実際は「tanθ≒経費率の差→θ≒arctan(経費率の差)」で表されると思います。
そしてこの4資産で注目は全世界株だと思いますが、まずグラフのギザギザ感が日本債やグロ株と全く違います。新興株に至っては振幅のレンジが異常なので縦軸を層別しています。この要因は次回の記事で触れますが新興株の先物運用による現物運用とのトラッキングエラーだと考えています。
今回確認しておきたい特徴は累積騰落率差はプラスでも基準価額の比で見ると三井住友全株はマイナスになっている部分です。まずコストメリット(0.6-0.45=0.15%/年→0.6-0.25=0.35%/年@2014/04/01)が充分生かしきれていないことが確認できます。初見では「これだけ低コストなら分配課税や税額控除の手間がある米国ETFいらないじゃん(´∀`)」と思ったんです。もちろんそれは基準価額にリーズナブルな有意差が見出せる場合に限られます。今後の純資産等の安定による巻き返しに期待です。
二つのグラフにおける正負の逆転については、「累積騰落率差」は単位時間あたりの「変化率」を単純積分したものであって、その時の基準価額の絶対値を考慮していないことによると考えます。基準価額の上昇時または高い時期(この場合は2012-2013年頃)に累積騰落率差の減少が続くと「変化量」は相対的に大きくなるため、累積騰落率差はプラスでも「規格化基準価額比」はマイナスになることはありえます。このような現象はありうると思っていましたが現認したのはこれが初めてです。実際のパフォーマンスとしては後者の「規格化基準価額比」の方が正確に反映していると思います。
インデックスファンドでは基本的に「分配(課税後)再投資基準価額(=トータルリターン)」が王様だと思いますし、運用やその他もろもろのバラツキも乗ってくるので、信託報酬や経費率(実質コスト)の数値だけでなく基準価額の変化率および経時変化も解析しないと判断できないと考えています。
【感想】
「ぐぬぬ」
となりかけましたが、全世界株については今のところ杞憂になりそうです。どちらかというと、とよぴ~さんに対する指摘を水瀬さんに先を越されてしまったことの方が
「てへぺろ(・ω<)」
という感じです。
個人的にはもう一つ着目している「三井住友・日本債券インデックス・ファンド」が運用による外乱の入る余地がなさそうなのでいいなあと思います(´・ω・`)積立オンリーだと使い勝手は窮屈ですが。
インデックスファンドはこのような情報のアベイラブルさと再現性(分解能、精度、有意性の高さ)が良いと思います。ETFだと二つの価格の混在や情報の入手のハードルからここまで容易に解析できません。
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1. ベビーファンドが2つだけのマザーファンド
新興国部分のマザーファンドはDC新興国とDC全世界株以外にベビーファンドがありません。(純資産2億円未満)
完全に足を引っ張ってしまっていますが、ほかにマザーファンドはないのでしょうかね。
先進国株式マザーファンドのベビーファンドがほとんどDCと適格機関投資家向けばかりであるところをみると、新興国株式クラスでそのような種類の投資元が少ないということなのかもしれません。