【Unlimited Variation Works】
「分散投資によるリスク低減」や「長期投資によるリスク増大」、これらは誤差論における誤差伝搬法則により記述されると理解しています(参考「
誤差伝搬法則」)。
数式だけでは分かりにくいこの概念を具象化することで、分散投資とその一手段であるインデックス投資を支えるバックグラウンドの強化を図ります。
【考え方】
平均値ゼロ、標準偏差20%の二つの独立した正規分布乱数をパラレルに16384(=2^14)個ずつシーケンシャルに発生させ、それぞれの「和」、「1/2ずつの加重平均」、および「積」を新たな数列として生成する。それらの統計量を求めると以下のようになります。
【統計量】
|
分布① |
分布② |
①+② |
①/2+②/2 |
①×② |
平均値 |
0.01% |
0.04% |
0.04% |
0.02% |
0.13% |
シグマ |
19.94% |
19.96% |
28.53% |
14.26% |
28.82% |
中央値 |
-0.23% |
0.01% |
0.07% |
0.03% |
-1.90% |
【リスクの投影】
上記乱数列の誤差伝搬の投影がこのヒストグラムになります。冒頭のプロットは試行回数16384のうちの64回分の変分(variation)をシリーズで可視化したものです。
【考察】
◆青色(①+②)
単純に加算しただけでは誤差(確率分布の広がり)は拡大するだけ。このsimでは二つの乱数が独立(相関係数ゼロ)でかつ等シグマのため合成後の標準偏差は元の分布の√2倍となる。
◆赤色(①/2+②/2)
分散投資は足して1になるように係数掛けしているから誤差がシュリンクする。この場合は上記で√2倍に拡大したシグマが等配分により分離されるため合成後の標準偏差は√2/2=1/√2倍となる(元の分布の1/2倍にはならない)。
◆桜色(①×②)
単純な誤差の積は比重1同士の掛け算であるため加算(青色)と同様に誤差が拡散される。これは為替換算や時間方向の誤差伝搬(長期投資による不確定性の拡大)に相当する。
特に注目すべきは青色(和)に対して桜色(積)は分布が左右非対称であり、かつセンター付近が左寄りに、裾は右側が長く尾を引いていること。この非対称性はまさに対数正規分布を表すものであり、掛け算(複利)による誤差の重畳は中央値が平均値に対して低下することを示している。
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