【運用管理費用の法則(グロ株、リニア)】
雪山にかまけている間にインデックスファンドの低コスト化がヤバいですね。
「エグゼアイ積立」というエグゼアイの別ラインと、それをトレースした「イーマクシススリム」によって、運用管理費用が時間に対して指数関数(複利)で低減していくという「運用管理費用の法則」に「飛び(段差)」が発生してしまいました。
冒頭のグラフは代表的なグロ株(一部全世界株およびFOF含む)の運用管理費用(税抜)の時系列プロットです。以下は直近の動きを表にしたものです。
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変更前(税抜) |
変更後(税抜) |
発表日 |
実施日 |
eMAXIS Slim 先進国株式インデックス |
0.19% |
0.189% |
2017/11/06 |
2017/11/10 |
i-SMT グローバル株式インデックス(ノーロード) |
--- |
0.19% |
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2017/11/24 |
EXE-i つみたて グローバル(中小型含む)株式ファンド |
--- |
0.142%
(=0.1+0.042) |
--- |
2017/12/06 |
EXE-i つみたて 先進国株式ファンド |
--- |
0.1095%
(=0.075+0.0345) |
--- |
2018/01/12 |
eMAXIS Slim 先進国株式インデックス |
0.189% |
0.1095% |
2017/12/29 |
2018/01/30 |
以下のように縦軸をlogにすると複利=指数関数(=直線)であることと、今回の段差がより分かりやすくなると思います。
【運用管理費用の法則(グロ株、片対数)】
「エグゼアイ積立」と「イーマクシススリム」は従来の法則から予測される時期から約「3年」前倒しして低コスト化を実現したことになります(近似線から想定される0.1095%ラインは2020/12/13)。以下はここ数年の拡大図です。
【運用管理費用の法則(グロ株、リニア、拡大)】
運用会社に伺ってみたいことは、この「低コスト化を実現するために何か「ブレイクスルー」のようなものがあったのか」という点です。何らかの工夫(自動化とか?)で経費や人件費を抑制したのかとか、ただのパワープレイなのかとか。
また委託会社(運用会社)のみならず販売会社(証券会社、銀行)や受託会社(信託銀行)の説得や同意もけっこう大変なのではないかと思います。
我々インデックスファンドユーザーも図々しくならないように低コスト化を実現している背景を知っておくことが重要に感じています。
また、「インデックス投資が複利(指数関数)で増大し、金融機関の収益を一定と仮定すると、コストが複利(指数関数)で低減する」というのはほぼ自明ですが、一応計算で確認しておきたいと思います。
純資産:a(1+g)^t
運用管理費用:f(t)
収益(純資産×運用管理費用):R=[a(1+g)^t]×f(t)=const
ゆえに、
f(t)=const/[a(1+g)^t]
=a’(1+g)^(-t) (a’=const/a)
例えば、a=100億円、R(=const)=1億円、相乗平均g=3%(相加平均5%、シグマ20%)と仮定した場合にコストの時間依存f(t)を描いてみます。また継続的に資金流入(=オフセット)があり収益一定とするなら指数関数にはならずより速い速度で低減すると思われます。毎月の資金流入を1億円と仮定したケースと合わせてプロットします。
【運用管理費用の時間依存(リニア)】
【運用管理費用の時間依存(片対数)】
マゼンタの運用管理費用(資金流入なし)がセミログで直線、つまり指数関数(複利)であることがわかります。一方、水色の運用管理費用(資金流入あり)は曲がっています。ベースの純資産と純資産の変分、資金流入量との相対関係に依存して運用管理費用の低減が加速していることがわかります。
【まとめ】
運用管理費用が低減するのはユーザーとしては好ましいことです。しかしコストしか見ていないといつまでたってもインデックス投資は論理的・定量的に進化しません。前からずっと書いていますけど、インデックスファンドとしての品質を保った(トラッキングエラーの小さい)コストダウンと、論理化・定量化とを両立したインデックス投資の進化を望みます。
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