アセットアロケーションを考える上で効率的フロンティア(有効フロンティア、パレート解)という概念があります。各資産の組み合わせにおいて、あるリターンに対してリスクを最小化する点の集合を指します。
今回はこの曲線が時間に対してどのように変遷していくか見てみたいと思います。例えばリターンもリスクも相関係数も、いつの時点か、どれだけの期間か、で常に変わりうるものです。その程度を確認します。
以下の3資産における月次データを入手します。
◆日本株(日経平均):米国Yahoo
◆グロ株(MSCIコクサイ):MSCIbarra(ドル円:日銀)
◆日本債(日興債券パフォーマンスインデックス):日興フィナンシャル・インテリジェンス
TOPIXより日経平均の方が長く遡れるのでこちらにします。その日経平均に揃えて1984年1月末からです。日経平均が配当なしなのでMSCIコクサイも配当なし(price)とします。また日本債はNOMURA-BPIが手に入らないので日興債券インデックスの"総合"を使わせてもらいます。
このデータから毎年末における20年リターンとリスク、相関係数を算出したのち、任意の2資産の合成リターンと合成リスクをウェイトを10%ずつ変えて求めます。20年の期間がとれる2004年末からプロットします。
【日本株×グロ株】
【日本株×日本債】
【日本債×グロ株】
こうやって見ると効率的フロンティアは毎年移り変わっていることがわかります。特にリスクに対してリターンのブレが大きいことがわかります。またリーマン前後で分布がふたつに分離しているように見えます。日本株×日本債は数字だけで考えると「負の効率的フロンティア」になってしまっていて日本株を持つ理由がありません(ただし株式は配当を考慮すると縦軸で2~3%くらいシフトすることが期待できます)。
ここで言いたいことは、その時々の最適解に拘る必要はないということです。リターンに対してリスクは比較的安定しているので、許容できるリスクの上限や、相関係数で最も効率よくリスクを低減できる組み合わせに着目してアセットアロケを決めるとよいのではないかと考えます。私も「
アセットアロケーションの決め方その2」などでモンテカルロ計算でパレート解を求めたりしていますが、投資のリターンとリスクに関しては気休めと言ってもいいと思っています。
さらに2資産における合成リスク最小配分(「
分散の効率」参照)の推移がどうなるかも見ておきます。こちらは年末だけでなく2004年1月末から2013年8月末までの毎月の合成リスク最小配分を求めます。またその時の合成リターンと合わせ、ランダムウォークをプロットします(上の3つのグラフの極値の推移に相当)。
【合成リスク最小配分の推移】
【合成リスク最小配分ランダムウォーク】
あまりいい例ではないですが日本債絡みはほとんど日本債だけで決まっています。また日本株×グロ株の配分は振幅で10%程度の変化量のようで、リスク最小だからって毎年ウェイトを調節する必要のない程度の量であると感じます(40%というのは山崎元氏のオススメ配分ですね)。
今回は例として2資産で考えました。2資産なら効率的フロンティアを求めることはそれほど難しくありません。問題は3資産以上で、いちいちモンテカルロ的に求めるわけにはいかないので解を定式化する必要があります。おそらく合成リスク最小配分の一般形に合成リターンの制約条件を追加すれば可能になると考えています。
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